Bialystocks Official Interview(2022.01)

作品の幕が上がった刹那、1秒ごとに物語の情景とそこに生きる人間の像に色彩が帯びていく音楽世界へ引き込まれていく。どんな時代でも息づくような普遍的な求心力=豊潤なストーリーテリング力をまとっている歌と、楽曲ごとにさまざまなジャンルの意匠が施されていると同時にどれも一貫してクライマックスに向けて静かに上がっていくサウンドの熱量に、こちらの心拍が呼応する。そして、必ず最後は優しい感触を残したまま楽曲が閉じられていくのが印象的だ。革新的な音楽性を誇っているとか、そういうことではない。しかしたしかに今までどこにもなかった、それでいて誰しもの胸が高鳴り、誰しもが深い親しみを覚えるような音楽表現を、このBialystocksの1st EP『Tide Pool』という作品は、全5曲を通して活写している。

Bialystocksのメンバーは、ボーカル&ギターの甫木元空(ホキモトソラ)とキーボートの菊池剛(キクチゴウ)の二人。甫木元のルーツには国内のフォークミュージックが色濃くあり、菊池は高校時代に観た映画『プロデューサーズ』を経てフランク・シナトラにたどり着き彼に魅せられ、大学時代に経験したニューヨークへの留学をきっかけにジャズに傾倒していったという。さらに、多摩美術大学の映像演劇学科出身の甫木元はすでに映画監督として注目すべき新たな才能として愛好家たちから熱視線を送られており、このBialystocksというバンドが立ち上がった契機もまた、彼が青山真治プロデュースのもとで脚本・監督・音楽のすべてが手がけた『はるねこ』だった。『はるねこ』は2016年に劇場公開され、その後、数年間にわたり生演奏付き上映という形をとり丁寧なあり方で観客に届けられていった。その生演奏におけるバンドメンバーの一人として参加していたのが菊池だった。ちなみに埼玉県出身の甫木元は、4年前から新たな映画作品の製作を見据えて祖父の出生地である高知に居を構えており、そこで作家人生を送っている。

甫木元:大学卒業後に撮った映画『はるねこ』に関してプロデューサーと話していたのは、DVD化や配信はせずに上映を続けたいということで。それで、ミニシアターでの劇場公開の終了後に 生演奏を加えた上映会を続けていったんです。そういう映画があってもいいんじゃないかと。もともと『はるねこ』は音楽まで自分で手がけるつもりはなかったんです。そこまで自分の色が付いてしまうのは面白くないと思っていたんですけど、でも──大学の卒業制作を撮るタイミングで父親が亡くなったんですけど、父親は僕が生まれる瞬間から小学生くらいまで毎日ホームビデオで日常を記録していたんですね。僕はそのホームビデオを編集してドキュメンタリーを製作して。そのドキュメンタリーは最後に現在の僕が登場して弾き語りをするんです。それを観た『はるねこ』のプロデューサーに「脚本と監督だけではなく、音楽も作ってみてほしい」と言われて。そのときに初めて自分の中で映画と音楽が接点を持ちました。菊池は映画音楽のレコーディングには参加していないんですけど、前に少しだけ一緒にバンドを組んでいたことがあって。その縁で彼に声をかけて生演奏を一緒にやってくれるミュージシャンたちを集めてもらったんです。生演奏上映をやってみて、バンドメンバーが変わるごとに劇中の歌の捉え方も変化していくというすごく新鮮な感覚があったんです。そこから自分の中でバンドという形態への興味がどんどん高まっていきました。

菊池:甫木元の歌声を最初に聴いた印象は「声が高い人だな」という感じで(笑)。出会ったときは甫木元の映画のことは知らなくて。そのときはまだ『はるねこ』も公開されてなかったのかな。それから映画音楽の音源をもらったときに最初は昔ながらの曲という印象だったけど、いざ演奏したらだんだん曲のよさがわかってきて。サウンドをもっと洗練させればさらに面白い曲になりそうだなと思ったんです。もともと僕はソロ名義で活動しようと思っていたんですが、自分一人で音楽を作っていると締め切りがないので、永遠に1曲もできないような状態が続いていて。Bialystocksでは甫木元と一緒にやることで締め切りを設けるような感覚で曲を作れてるんです。

Bialystocksは映画とともに産声をあげた。このバンドの音楽像がリスナー個々人の記憶を照らすようにして情景を浮かび上がらせるのは、甫木元が映画作家であることもやはり離れがたく影響している。Bialystocksの楽曲制作は高知にいる甫木元と関東圏に住んでいる菊池がデータ上でキャッチボールしながら進め、レコーディングは東京で行っているという。作詞作曲クレジットには二人が肩を並べている楽曲もある。アレンジメントは菊池が描いたサウンドスケープが強く反映されている。

甫木元:菊池と曲を作るうえでミュージカルが好きという共通項はかなり大きなポイントかもしれないです。

菊池:たとえば2曲目の「All Too Soon」の出発点もミュージカルを参照点にしたところがあって。昔のミュージカルの曲を聴いてると必ずグッとくる部分があるんですけど、その部分を反復するような感じで曲を作れないかなと思ったんです。

ニューソウル、あるいはクラシックなAORのような佇まいをたたえているM1「Over Now」、終わりなき真夜中の気配の中でネオソウルを彷彿させる色気が揺れるM2「All Too Soon」、タイトル通り車寅次郎と渥美清の生き様を重ねるように歌が紡がれるブルージーなM3「フーテン」、甫木元の死生観がロードムービーのごとく描かれたギターロック的なソングライティングにレトロウェイヴなシンセが絡み合うM4「光のあと」、たとえばキングス・オブ・コンビニエンスなどにも通じるアコースティックな歌としての芯の強さを聴かせてくれるM5「あいもかわらず」。

作品が終幕したときに流れる特別な余韻が、Bialystocksの核心を映し出す。甫木元は、言う。

甫木元:「これはなんだったんだろう?」という状態に惹かれるんですよね。光のようにバーッと何かが起こることって、その瞬間ですべてが終わってしまう感覚があるんですけど、そのあとのほうが重要なんじゃないかと思っていて。こういう感覚は映画を撮っていて感じることでもあって。映画も何かの瞬間にカメラを向けることってとても難しいんです。泣いてる人にどんどんクローズアップしていくのがいいことかというと、それはまたちょっと違うと思う。たとえばそのとき隣で洗濯物を干しているおばさんが引きの画で見えていたらまた全然違う感覚にもなったりする。泣いてる人が去ったあとに何が残っているのかというところにカメラを向けたほうが豊かで普遍的に残るものになる気がするし、映画だったらその映像を観たり、音楽だったらその曲を聴くいろんな人に置き換えられるものになると思うんです。

ようこそ、Bialystocksの音楽世界へ。この底知れない余韻の中で、あなたの感性を、その人生模様を浮かべてみてほしい。

インタビュー&テキスト=三宅正一

  • 1st EP

    「Tide Pool」

    2022.01.26 Release

    1,500+Tax

    01. Over Now
    02. All Too Soon
    03. フーテン
    04. 光のあと
    05. あいもかわらず

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  • 1st Full Album

    「ビアリストックス」

    2021.02.17 Release

    2,000+Tax

    01. 花束
    02. I Don’t Have a Pen
    03. ごはん
    04. またたき
    05. コーラ・バナナ・ミュージック
    06.夜よ
    07.Nevermore

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  • 5th Digital SIngle

    「All Too Soon」

    2021.12.01 Release

    配信シングル+Tax

    All Too Soon

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  • 4th Digital Single

    「光のあと」

    2021.09.29 Release

    配信シングル+Tax

    光のあと

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  • 3rd Digital Single

    「I Don't Have a Pen」

    2020.12.23 Release

    配信シングル+Tax

    I Don't Have a Pen

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  • 2nd Digital Single

    「WINTER」

    2020.06.13 Release

    配信シングル+Tax

    WINTER

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  • 1st Digital Single

    「EMPTYMAN」

    2019.06.19 Release

    配信シングル+Tax

    EMPTYMAN

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